重さを密着感に変換するAmauti

ウェアとギア

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必要最低限の装備で軽快に行動するためのワンデイバックカントリーパック「Amauti」。

元ナショナルチームのスキーヤーでFWTにも出場経験があり、現在はモンブランに近い山の麓に居を構えR&Dを頻繁に行うスイスのデザイナーと共に開発を行った唯一無二のバックパックです。

バックカントリースキースキー・スノーボードで想定されるあらゆる環境下や動きに対して機能的かつシンプルに使用できるよう、コンストラクションからバランス等、全てにおいて妥協なき開発の元に生み出したこの製品。

今回、ライターの林拓郎氏に解説してもらいました。


このバックパックの特徴は名前に表されている。
「アマウティ」とはイヌイットの女性が羽織るフード付きパーカーのことだ。あざらしの毛皮などを使って作られたパーカーの背中内側には、アマウトという赤ちゃんのための袋が肩紐によって設えてある。こうしてイヌイットのおかあさんは赤ちゃんを冷たい風や雪から守りながら両手を自由にし、あかちゃんは背中にピッタリと寄り添って、お母さんのぬくもりと安心感に包まれるというしくみだ。言ってみればこれは、イヌイット版のおんぶ紐付きねんねこ袢纏なのだ。

「アマウティ」の特徴のひとつはその機能的な構造にある。赤ちゃんの重みはパーカー自体にかかるが、その荷重によってパーカー全体で赤ちゃんを心地よく母親の背中に密着させるようになっている。つまり、重さがそのままコンプレッションに変換されるのだ。

Teton Bros.が新たにリリースしたAmautiはイヌイットの「アマウティ」に学んだ新しいタイプのバックパックだ。
パック全体を外側から一枚の生地で抑え込み、それがそのままショルダーストラップとウェストストラップに連続的に繋がっていく。その構造は、バックパックの重さを滑り手の背中に密着させる圧力に変換し、滑走中の揺れを抑え、今までに感じたことがないほどの快適な背負心地を叶えながら、肩の動きを自由にすることで上半身をより積極的に使ったライディングを実現することになった。

そもそもスキーやスノーボードといったウィンターアクティビティでは、夏の登山のようにバックパックの重さを腰で支えることが難しい。着ているものが厚すぎて、ウェストベルトでパックの荷重を支えることが厳しいのだ。勢い、多くの人はバックパックの重さを肩で支えることになる。
それなら最初から肩で支える構造にするのはどうだろう。こうした発想の上に「アマウティ」にインスパイアされた、『重さ→密着度変換システム』システムを実装。

できあがったのは、極上の背負い心地を備えたアクティビティバックパックだったというわけだ。

ここで明確にしておきたいのは、Amautiの容量が25リットルという点だ。想定しているのは日帰りのバックカントリー装備であり、重さの目安で言えば10kg以下だ。

この荷重設定だからこそ、ウェストベルトをぎゅっと締める必要がない。重さを効率よく密着感に変換するために、パック本体には逆くさび型のボディシルエットを採用。スノーセイフティポケットはあるけれど、外から包むオーバーラップな構造は譲れない。そのため、外側に大きなポケットは付けず、レスキューギアはバックパネルアクセスのメインコンパートメントに入れることも視野に入れている。

Teton Bros.の2つのバックカントリーパック。
左のKOMA 38は収力抜群、右のAMAUTIはフットワーク重視。それれのコンセプトに合わせた機能を盛り込んでいる。

初見のAmautiには馴染めない部分もあるだろう。否定の気持ちが湧いてくるかもしれない。けれど一旦背負って滑ってみれば、僕らが常識と思っていた "バックパックはかくあるべし" というスペックは思い込みだったのではないかという気がしてくる。それほどまでにAmautiは尖った機能性で明確なコンセプトを主張し、異次元の背負心地を主張する。

機会があればぜひとも、オートマチックに密着してくるバックパックがどれほど快適かを体験してほしい。そして荷物の重さとはその質量ではなく装着感によって決まることや、急斜面の切り返しでもバックパックが背中に張り付いている頼もしさと、滑走中にその存在を忘れてしまう抜群の背負い心地を味わってほしい。

そうした一日の終りには、このパックが備えるパフォーマンスとシンプルなシルエットの理由を、体と滑りで理解することになるだろう。

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この記事を書いた人

林拓郎

林拓郎

スノーボード、スキー、アウトドアの雑誌を中心に活動するフリーライター&フォトグラファー。滑ることが好きすぎて、2014年には北海道に移住。旭岳の麓で爽やかな夏と深いパウダーの冬を堪能中。アウトドア用品店「Transit 東川」オーナー

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