2020.09.29
かなうことなら365日ウール製品を着ていたい WS AXIO LITE TEE
山、川、海、雪、なんでもこよなく愛する一児の母、アウトドアやウィンターアクティビティ専門誌で活躍するアウトドアライター、福瀧智子氏からこの夏おすすめのアイテムをレポートしてもらいました
ヒツジからのいただきものであるウールの性能のあまりの快適さに、年がら年中ウールを身に付けて暮らしたいと思っている人、挙手! 肌着や靴下、Tシャツなどをフィールドだけじゃなく普段から使いたい人、実際に結構いると思うんですよね。
アウトドアでは定番のメリノに代表される「ウール」は、肌触りがやわらかく、気持ちのいい湿度をつねに肌面に保ち、天然の抗菌作用によって臭くなりにくいことなどで知られています。そのうえ乾く前の濡れた状態でもじんわりと温かく、気化熱による急激な体温の低下も防いでくれるので、寒冷下の汗冷えも抑えられるという魔法のような素材。
とくに寒さに敏感な女性は必携アイテムと言えます。
「かなうことなら365日ウール製品を着ていたい」
しかし私を含め大半の人はそれが叶わない。ウールものは化繊シャツなら2枚は買えるほどの高額商品であるし、天然素材ゆえとてもデリケートな製品。どうしても縦走や、沢登り、バックカントリー……といった“ここぞの場面”でフィールドへ着ていく秘蔵のアイテム的なポジションになっているのではないでしょうか。
そんな「ウール好き」に朗報なのが、2020年に発売となったTBの「Axio(アクシオ)」という素材。
このAxioがすごい!
Axioは、愛知県の西部から岐阜県の一部にある織物の生産地「尾州」に本社を持つニッケファブリックという会社が、TBと共同開発した「交撚糸(こうねんし)」と呼ばれる糸のことです。
読んでそのまま“交わらせて撚った糸”という意味なんですが、尾州クラフトマンの技術力で「ウール繊維の内側にポリエステルのフィラメント(極細繊維)をらせん状に走らせた」という、パッと聞いただけではどうやったらそんなことができるんだかイメージすらできないくらいの、画期的な素材。
「世界で一番機能的なハイブリッドウールを作ろう」という共通の目的を持ってニッケファブリックとTBが開発に挑んだそうです。
ではAxioがウェアになったらどうよいのでしょうか。
分かりやすく箇条書きでいきます。ちょっと難しい部分もありますがぜひ付いてきて!
① 糸の表面にポリエステルが露出しないため、肌触りや質感はウールの風合いがそのまま残っている。
② 糸の表面に凹凸がなくスムーズであるため、擦れてもウール100%の従来品よりもピリング(毛玉)が発生しにくい。特殊マシンで摩擦し続けるテストを行なった結果、ウール100%の生地が6,000回で糸切れを起こしたのに対し、Axioは12,000回で見た目に変化が現れ、糸切れは20,000回以上経ってからだった。
③ 織物を引っ張った際に破断する強度を評価するテストでも、化繊フィラメントが糸の内側に配置されることで耐久性がぐんと高まり、ウール100%の製品と比べ倍以上の強さがあった。
④ ポリエステルの一部には糸自体に溝を持たせた「異型断面」という糸を使っていて、飛び抜けた吸水性、放出性も持っている。吸い上げた汗をすばやく蒸散し、短時間で生地がドライに。ウール100%の製品と比べ速乾性に優れ、また冷却機能も兼ね備えている。
これまでにもウール × 化繊のハイブリッド素材は、各ブランドから手を変え品を替え多数登場してきました。たとえば生地の肌面と外側とでウールと化繊を変えたもの。織物の縦糸と横糸でウールと化繊を使ったもの。ウール繊維束の“外側”に化繊を巻き付けたもの……などがありました。どれもひとえにウールのよさと化繊のよさのいいとこどりをしたかったからに他なりません。
その最新素材であるAxioは、世界でも有数のウール生産地である尾州のクラフトマンシップが生みだした会心の作品といえるのではないでしょうか。
実際、この1週間朝から晩まで(テストのため洗濯もせず)毎日着用していますが、柔らかく、ほんのりいい意味で“しっとり”していて、臭くもならない。またランニングといった、ウールでは汗の処理(吸汗)が追いつかないような運動量の多い場面ではウールの内側にある化繊が実力を発揮して、あっという間に乾いてくれる。
何より、日常でウール製品を着用したときの「大事に使わなければ」といったセコい感情がないのが気楽!(笑)
これは使えます。水に濡れて身体が冷えがちなシーカヤックやSUPといった海でも着たいかも。
長袖もあればいいのにな~。
個人的にですが、一方でメリノウール製品の生クリームのような生地表面のなめらかさと比べると、おろしたての頃はごくわずかにかさつく感じがありました。ただ、これはじっと集中して生地について考えているときに感じる程度であり、実際フィールドに出たり、ランニングや、料理や、子どもの世話や、映画鑑賞や、酔っぱらったときには完全に忘れております。その程度です。何度か洗濯することで解消されたしね。
さぁ、Axioの登場によって「365日ウールを着用したい」という願望が叶う可能性が出てきました。
願わくば、アクティビティ向けだけではなく普段使いできるシルエットのものもリリースしてほしい。そしてきっとこの素材は登山用ソックスに向いています。どんなに大事に履いてもカカト部分がすり減ってしまうウールの登山ソックス、このAxioに期待!
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