2020.11.29
秋の山で着用してみました。OZE JACKET 2.0レビュー
山、川、海、雪、なんでもこよなく愛する一児の母、アウトドアやウィンターアクティビティ専門誌で活躍するアウトドアライター、福瀧智子氏からこの秋おすすめのアイテムをレポートしてもらいました
ようやく日中でも涼しげな風が吹くなど、関東でも酷暑が遠ざかりつつあります。
それにともなってフィールドで試しているのがTBの「Oze Jacket 2.0」です。今年の春に手にして以来、暑くなる前に近所の低山などで着用してきましたが、このジャケットをしっかり使い込みたいのは秋だな、と個人的に思っていたわけです。
この「Oze Jacket 2.0」は、同じTBの男性用「Yari Jacket 2.0」のウィメンズ版。
去年までTBの防水透湿シェルを女性が着る場合は、2013年にAPEX AWARDを受賞した人気の「ツルギシリーズ」のジャケットやパンツからXSやSサイズを選ぶほかありませんでしたが、この「Oze Jacket 2.0」は3シーズン用のアウタージャケットとしてサイズやパターンを女性専用にデザインしたもの。頭からかぶるプルオーバータイプの「ツルギジャケット」や「ツルギライトジャケット」と比べ、このOze Jacket 2.0(男性用Yari Jacket 2.0)は汎用性の高いフルジップタイプで、TBユーザーから寄せられた多くのリクエストによって昨年誕生しました。
そこから素材を変えたアップデート版ということで、2.0というわけなんですね。
で、なぜこれが秋から使えると思ったのかという部分。
さまざまなシチュエーションで試してみた結果、個人的に「レインウェアとしても寒冷地用のシェルとしても使えそうなジャケット」であったことが理由と言えます。
アップデートされたこの2.0では、素材にTBが東レと2年をかけて共同開発した3レイヤーの「Aqua Breath」が使われています。注目したいのが、この素材が防水透湿性のほか、ウェア内をドライに保つために通気性をとくに重視しているという点。
この素材が誕生したのは、TBがサポートしているアスリートはもちろん、企画開発をしているTBスタッフ自体がそもそも年中運動量の多い遊びをしているからにほかならないわけで、身体をたっぷり動かせばどうしても“蒸れ”がついて回るというウェア事情において、透湿性+通気性というダブルの機能で高温多湿な日本の気候にしっかりと対応させました。
実際、雨の日を選んでトレイルにも出てきましたが、強めの風が吹くと生地が通気しているのが分かるほど(とくに下が半袖で肌が出ているとよく感じる)。もちろん透湿性+通気性でも発汗量によって処理に限界はありますが、他社製品を同時に試しても“抜ける感じ”、“通る感じ”が顕著でした。
一方で登山用のシェルとして秋~初冬(無雪期)の山に持っていきたくなる側面も持ち合わせています。表地は耐摩擦性を高めた15Dのリップストップナイロンを用いていて、ツルギやツルギライトと比べても長めのラウンドテールで風雨から背面をしっかりプロテクション。 またTBの女性用Mサイズの製品のなかではゆとりあるフィット感で、薄手フリースや動的保温着を重ね着しても、もたつく感じがありませんでした。
運動量が増えて素材の透湿性や通気性だけでは処理が追いつかないときは、フロントに備えたポケットを開ければダイレクトに換気も可能。
またそのフロントポケットはバックパック着用時もハーネスの位置に関係なく上から下までフルで開け閉めが可能です。ちょうど上下とも干渉しないように絶妙に配置されていて、ベンチレーションとして、ポケットとして、いずれも非常に使い勝手がいいです。
フードはヘルメットにも対応した形状。
重量はずば抜けて軽いというわけではありませんが、生地の厚みやフード形状、扱いやすさを考えたジッパーなど、さまざまな構成要素があるなかでもっともいいバランスをいい具合に取った、という印象を受けました。
ちなみにけっこう驚いたのが、ハードシェルとは思えない生地のしなやかさ。シェル特有のパリっとした硬い着用感がなく、ゴワゴワしたものに包まれているという感覚もありません。TBがこれまで使ってきたポーラテック社のNeoShellをご存知の人は、あの柔らかさを彷彿とする着心地と言えば分かるかも。それがお好きだった人は、はまると思います。
防水透湿でありながら通気し、しなやかな着心地。いろんなシチュエーションで使えるので、普段は引き出しにしまうなど山用に限定してしまうのは惜しい。ガッツリ歩く山行はもちろん、野外フェスもキノコ狩りも、犬の散歩も買い出しも、春~秋(初冬)を通じて使える1着ではないでしょうか。
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