晴れた日も濡れた日も、ずっと着て長い距離を歩こう。LONG TRAIL HOODYレビュー

製品レビュー

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山、川、海、雪、なんでもこよなく愛する一児の母、アウトドアやウィンターアクティビティ専門誌で活躍するアウトドアライター、福瀧智子氏からこの秋おすすめのアイテムをレポートしてもらいました


晴れた日も濡れた日も、ずっと着て長い距離を歩こう。LONG TRAIL HOODYレビュー

稜線からの見晴らしや、極上パウダースノーを思い描きながら、えっほえっほと快調に山を登り進んでいると、体温調節のためのこまめな脱ぎ着がペースを乱し、面倒に感じる人は少なくないのではないでしょうか。

私もその例外になく、「着たまま」という物ぐさなワードが大好物。秋冬ウェアとして人気に火が付いた「動的保温着(※)」が数年前に登場したときには、“何とかゆいところに手が届くものが出たんだ”と、ひとり小躍りしたほどでした。

※:着たまま行動できる綿入りの保温着。汗が抜けやすくウェア内が蒸れにくい。

さて、ソフトシェルも然り。

ソフトシェルは柔らかくストレッチ性に富んだ素材で作られた、通気性や防風性、撥水性に優れたウェアのこと。雪や雨、風からのバリア機能が高い丈夫な生地に防水透湿性を持たせた「ハードシェル」とは、同じ「シェル」という言葉を用いていてもまったく性格が異なります。

TBのソフトシェルジャケット「WS Long Trail Hoody」は、毎年仕様が少しずつ変わりながら現在のモデルになっています。夏の普段着としてはさすがに暑いですがが、それを除いたほぼ1年フル稼働すると言っても過言ではありません。「ほぼって何さ」というツッコミに対しては、“友達の結婚式”とぐらいにしておきましょうか。

要はそれくらい使うってことです。

製品をざっくり先にご紹介すると、フルジッパータイプのジャケットで、フィッティングは緩すぎずタイトすぎず……といった着用感。薄手のミッドレイヤーの上にアウターとして着用しても違和感がありません。欧米の女性向け製品のようなウエストをしぼった細身シルエットではなく、わりとストンとしたデザインです。

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ポケットは左胸にひとつだけ。両サイドのポケットはバックパックのウェストハーネスとの重なりを考慮し、ここは潔く取った。

ソフトシェルだけあって生地はとても柔らかく、どの方向にも気持ちよくストレッチ。あらゆる動きに対してつっぱる感じがまるでなく、大きな動きもとても取りやすいです。

わかりますかね、この伸縮性。

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非常によくストレッチするので、個人的にはもう極わずかに細身でもいいかと思う。

直接肌に触れる裏側は微妙な起毛の凹凸があり、フィールドで汗に濡れてもピタッと付く感じのないドライな肌触り。半袖のベースレイヤーの上に着用すると、サラッとしたその着心地が腕によく分かります。

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裏面。ソフトなのに肌触りがパリッとしている不思議な生地。

フードは調整なしでかぶってもフィット感がよくできてますが、ドローコードひと引きで強風時にも飛ばされないようギュッと絞ることできます。ヘルメットも対応し、襟元はバラクラバのように口までしっかりと立ち上がるデザイン。

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歩きながらのフィット調整がとてもしやすかった。口までしっかり覆い、襟元に隙間のないデザインは冬に重宝しそう。

ソフトシェルを多用する人なら「あ~これは使える場面が多そう」と想像されると思いますが、先日歩いた初秋の北アルプスでも本格的な雨天時と暑いとき以外、行動の7割はWS Long Trail Hoodyを着用していました。

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久しぶりの山でうれしさを隠せない福瀧。

実感したのは、尾根や稜線では風をブロックしながら、運動して体温が高まってもしっかり通気することでウェア内を涼しく保ち、しかもよく伸びて動きやすい……といったソフトシェルの基本的な性能のほか、生地表面のみごとな撥水ぶりに驚きました。

小雨に打たれたときの写真ですが、思わず「ガラコか!」とひとりツッコむこと数回。水が玉となってコロコロと転げ落ちていく。トゥルトゥルやないの~。

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あまりによく弾くもんで家に戻って改めて撮影してみましたが、誇張なしで、水汲めます。

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超撥水の様子。うどんの出汁などもサラサラ~。食べこぼしでもその実力を発揮しました(実証済み)

これは、繊維1本1本にフッ素を付着させる加工をし、生地の表面張力が水より小さくなることで水を強く弾く作用によるものなのだそう。国内の撥水加工会社と作り上げたTBオリジナルの「Dry Action」という生地は、こんなふうに水を運ぶことができるくらいの超撥水でできています。

だから、多少雨に降られた程度ではウェア内に染みることはありません。夜が明ける前にヘッデンの明かりひとつで夜露に濡れた樹林帯の細いトレイルも歩きましたが、他の人が着ていたレインウェアの必要性を感じないほどでした。

ちなみに、この撥水して溜まっている水分はギュッと圧力をかけて握ると生地に浸透し、裏側に抜けます。あまりにも弾くので通気の穴がじつは空いてないんじゃないかと疑りたくなるんですが、強めに圧をかければ水を通すことができるほどの穴が確保されている(=通気する)、というわけです。

これは本当に驚きでした。

もちろん、縫い目は止水処理されていないし、メンブレンも挟まれていないので、本格的な雨に長時間打たれればは染み込むでしょうし、またバックパックのハーネスに触れ続ける部位は若干内部が湿る感覚もありました。が、そこはもう割り切ってレインウェアを登場さえるシチュエーションといえます。

気温や運動量次第でソフトシェル内が蒸れることもありますが、フロントジッパーの開け閉めによる換気を併用すれば体温調整の幅はかなり広いです。あと仕様としては目立ちにくいですが、袖口にエラスティック素材を用いたデザインが採用されたことも使い勝手がよかったですね。

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暑いとすぐ袖をまくり上げる“腕まくり派”としては、これが地味によかった!

生地はソフトシェルのなかでは、厚くもなく薄くもない、中厚手という印象。高密度でナイロン糸が織り込まれているので耐久性も高く、表面を枝や岩場で擦っても破れる心配はありませんでした。

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ベースレイヤーの上にアウターとして着てもいいし、薄手のミッドレイヤー的な感覚でハードシェルの下に着用してもいい。これからのシーズンだと間違いなくバックカントリーの必携アイテムになるでしょう。

雪山ではフィールドでの寒さに敏感な女性には、厳冬期の北海道や白馬の上の方だと通気性が効きすぎて寒いかもしれませんが、かぐらや白馬乗鞍、八幡平といった樹林帯が多い場所でのハイクアップのほか、残雪期の立山やニセコなどなど、雪上で使える場面は数え切れません。

そもそも山だけでなく、街も、自転車も、低山ハイクも、実家への帰省も、GOTOトラベルで行く冬の沖縄も……まさにマルチな1着であり、要は結婚式以外全部使えるってことです(笑)。あとNGは、企業面接くらいか。いや、受けるのがアウトドアメーカーならむしろ「それ選ぶとは、いろいろ山で遊んでますね」と経験値を評価されて採用決定でしょう(笑)。

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子どもを背負ってのハイキングはさほど歩かなくても汗をかく。通気性のありがたみを実感。

TBによってロングトレイルフーディーと名付けられたこのジャケットは、晴れた日も濡れた日も、この製品をずっと着て長い距離を歩こうという意味が込められたに違いありません。作り手の夢ある意図を感じながら、2021年もたくさん野山を歩きたいと思っています(早めの抱負ということで!)。

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この記事を書いた人

ふくたきともこ

ふくたきともこ

フリーランスの編集者/ライター。アウトドアやスノーボード関連の専門誌で活動する傍ら、フジロックや朝霧ジャムなど国内の野外フェスの制作にも携わる。最近の好きな山は飯豊連峰と伯耆大山。京都出身、一児の母。

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