2021.12.16
こいつの価値は、 あの泣きそうな寒さの中で 遊ぶ人にこそ伝わるのだ[ HOBACK PRIMA OVER HOODY 2.0 ]
スキー、スノーボード、アウトドアの雑誌で活躍するフリーライター&フォトグラファーでありながら、北海道でアウトドア用品店「Transit 東川」を営む林拓郎氏から「Hoback Prima Over Hoody 2.0」のレポートが届きました
2014 年に北海道に移住して、自分の常識がまったく通用しないことを思い知らされた。
防寒着の件だ。
寒いエリアで滑るときには、ジャケットの下に重ねられる薄い防寒着を用意しておく。たしかに本州では ずっとそうしてきた。が、僕は北海道の厳冬期のバックカントリーで実際になにが起こるか、について具体的な想像ができていなかった。
平たく言って本気で寒い時、ジャケットの下に保温着を着足すのはムリだ。樹林帯の中を歩いているときはいい。尾根が風を遮り、樹が風を弱めてくれる。ところが稜線に出た途端、風速10m以上の季節風が重量感をもってジャケットを叩くのだ。
あっという間に汗は冷えて、程なく鋭利な寒さが襲いかかる。毎度毎度、防寒着のことを思い起こすのはそうした状況に直面してからなのだが、尾根筋で用意してきた防寒着を着るのは不可能だ。なぜなら、そのためにはいったん、ジャケットを脱がなくてはならない。 え、この状況でジャケットを脱ぐ?
それは辛い。だって風は痛いくらいに冷たい。ジャケットを脱いだら、この風は肌に届けの勢いで体中に突き刺さってくるだろう。汗に濡れたフリースはこの寒風にさらされたらあっという間に凍るだろう。
厳冬期の北海道の尾根筋で、厚着のためとはいえ、いったんジャケットを脱ぐ、といったプロセスは現実的ではないのだ。僕はそのことを富良野岳で嫌というほど 思い知り、わかってるはずなのに旭岳で繰り返し、十勝岳で自分の忘れっぽさを呪った。
その結果、僕はバックアップとしての保温着を残しな がらも、ジャケットの上にクライミング用のビレイジャケットを着るというアイデアに落ち着いた。これなら極寒の季節風にさらされてもジャケットを脱ぐことなく、保温態勢に持ち込むことができる。
けれどビレイジャケットのカットは決してライディングには向いておらず、そもそもジャケットの上に着るなんてことは考えてないから腕が細く、僕はどうにも窮屈な思いをしていた。
それでも、北海道ではシェルの上にインサレーションを着るんだよ。それが現実的なエリアもあるんだよ、 と自分のレイヤリングに悦に入っていたのだ。
だからHOBACK PRIMA OVER HOODY を最初に見た時、一発でその意味を理解した。Teton Bros. スタッフの「このジャケット、なかなかわかってもらえないんだよね~」という声にも首が折れるほどうなずいて同意した。当たり前だ。こいつの価値は、あの泣きそうな寒さの中で遊ぶ人にこそ伝わるのだ。
シェルの上から10 秒で着て不自由なく滑れるサイズ感、手袋をしたままでも袖を通せるファスナーシステム、剥がしたシールを一瞬でしまえるデカいポケット。 なのに防水性はゼロ。なぜならこのジャケットが出動する状況なら、水は液体ではない。サイコーにとんがっ た、サイコーにクレイジーで、最高のプロダクト。オ レはオマエみたいなやつを待っていたぜ! とサンプル品を抱きしめたのだ。
今年も僕は素晴らしい冬を楽しむだろう。なにしろ僕のワードローブにはHOBACK がある。この極上の安心感こそ、HOBACK がもたらす最高の性能なのだ。
この記事に関連する商品
Hoback Prima Over Hoody 2.0 (Unisex)
この記事を書いた人