あらためて「透湿性と通気性は違う」という話

素材と性能

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このカタログをはじめ、Teton Bros.のアウトプットには「防水通気素材」という言葉が当たり前のように使われている。

「あれ? 防水"透湿"素材」ではないのかなと思った方もいるだろう。一昨年登場した次世代シェル素材「Täsmä」を表すときに使われる言葉の話だ。

たしかに、アウターシェルに使われる防水系の素材はGORE-TEXを筆頭に、押し並べて「防水透湿(性)素材」と表記されている。「水を遮断し、水蒸気を透すミクロの孔」を持つメンブレンの働きで、雨や雪を遮断し、水蒸気となったウェア内の汗蒸れを表に放出する。これが「透湿性」という働き。

「Täsmä」のメンブレンもミクロの孔から汗蒸れを排出するが、こちらは「通気性」と表現する。この「透湿性」と「通気性」というの言葉の違いこそ、実は機能性そのものの差でもある。

「透湿性」とは水蒸気となった水の分子を通すということで、気体を通すわけではない。さらには、GORE-TEXのメンブレンには無孔質(孔がない)のポリウレタン膜が貼られているため、透湿はするが空気はまったく通さない。一方で、「通気性」とは文字通り空気を通すことを意味している。試しに、両方の生地に口を当てて息を吹き込んでみると、その違いがよくわかるはずだ。

ちなみに「透湿」という現象が起こるためには温度と湿度、ウェア内外の気圧差という諸条件が大きく影響する。運動によって体温が上がり、汗をかいてウェア内の温度と水蒸気圧が高まると、冷えた外気に向けてメンブレンから水蒸気がしみ出てくる。空気は熱いところから冷たいところに流れるのと同じメカニズムだ。

その際、透湿量は限られるため、汗をかくスピードが透湿を上回ったり、外気温が高くウェア内外の温度差が少ない場合は透湿しにくいという弱点がある。たとえば、梅雨時期のような蒸し暑い日に防水透湿素材のレインウェアを着て山に登ると、思ったように汗蒸れが解消されないのは、それが一つの原因だ。

その点、「Täsmä」のメンブレンは、どんな条件下でも、着用した瞬間からダイレクトに「通気」が始まる。これが「透湿性」と「通気性」の違い。もちろん、通気量にも限界があるが、換気効果を比べた場合、いわゆる防水"透湿"素材と、防水"通気"素材とでは、どちらが効率的かは言うまでもない。

水蒸気となった汗が防水通気シェルを通り抜け、外気に触れて凍り付いた様子
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この記事を書いた人

寺倉力

パウダースキーの限りない魅力を追求する『Fall Line』誌編集長。 ライター / 編集者として各メディアで活動中