Teton Bros. x 人 -北野拓也 -〈後編〉

Teton Bros. ×人

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自然とともに歩み、共感できる仲間と製品と未来を創造していく。

Teton Bros.は日本、そして世界のフィールドで活躍するプロフェッショナルな仲間たちとフィールドで製品開発を行っています。“Teton”の名のもとに集まってくれた多くの“人” =Teton Brothers がどのように自然と向き合い、人生を築いているのか。そして、Teton Bros. ×人の化学反応を紡ぎます。


 

兵庫・芦屋のアウトドアショップ「スカイハイマウンテンワークス」店主であり、ティートンブロスのマウンテンランニングコレクションの企画にも深く関わっている北野拓也。

後編ではティートンブロスとのつながりについてインタビュー。彼を突き動かしている好奇心の源についても話が及んだ。
[全2回中の後編/前編はこちら]

ティートンブロスのマウンテンランニングコレクション始動のきっかけ

――スクランブリングパンツのように、北野さんの遊び方と直結したようなアイテムがティートンブロスにはありますが、どのようなきっかけでブランドとのつながりがスタートしたのですか?

10年くらい前、ティートンブロスの代表であるノリさんがウチの店に来てくれたんです。遊びから製品のことまでいろんな話をしたんですが、当時のティートンブロスはツルギジャケット、TBジャケットなど冬のウェアがメインで、そのときはウチみたいな場所で売るには気候的にちょっと合わないかなって思いました。

ただ、細かいディテールであったり、機能性であったり製品としてはすごく良いなと思って、「個人的にバックカントリーで使いたいですね」なんて話はしていたんですが、なかなかビジネスにはつながりませんでした。

 

――その後、なにがきっかけで製品作りに関わることになったのですか?

それからもノリさんは西日本に来るたびにウチに寄ってくれて、だんだん深い話までするようになったんです。当時、関西周辺でスクランブリングの岩場を開拓して、深めていこうという最中だったので、そんな話もしたんですよね。

あと、当時はレース全盛だったトレイルランニングに対して、自分は岩あり、沢あり、藪漕ぎあり、マウンテニアリングのなかでのランニングというものを楽しいと思って発信していたんですが、それにノリさんが興味を持ってくれたんです。
「そういうマウンテンという軸のなかでのランニングであれば自分も興味があるな」って。

そうしたら「競技主体のウェアではなくて、北野くんの考えるものをうまく製品に融合させて、マウンテンランニングっていう遊びにまつわるものを開発したらいいんじゃない?」という流れになって。
それで、そこから従来の製品よりもうちょっと保温性を下げて、西日本の温暖な気候でも使えるようなウェアを作ろうっていうことになったんです。

太平洋側にある六甲山は冬でも温暖。保温性が高すぎるウェアは活躍の場が少ない。

 

――そのような流れでマウンテンランニングコレクションが生まれたのですね。

シリーズの名前についてはすぐに「マウンテンランニングコレクション」と決まり、さらに「六甲山や関西周辺は標高1,000m前後の山が多いから、エレベーション1000なんてどう?」という感じでELV1000という名前が出てきたんです。

商品はノリさんといっしょに考えて作り出したんですが、最初の製品となったのがスクランブリングパンツでした。商品に「スクランブリング」という名前をつけた背景には、スクランブリングという文化を日本に広めて、同じように楽しむ仲間をひとりでも増やしたいなっていう気持ちがあったんです。

何度もモデルチェンジを行なってきたスクランブリングショーツ。最新のショップ別注モデルを穿いて岩山を駆け登る。

フィールドテストを通じて製品をブラッシュアップ

――それから少しずつアイテムが増えていったのですね。

まずロングのスクランブリングパンツが完成し、それからスクランブリングショーツもできました。さらに、それに合わせるTシャツ、スピーディーに気持ちよく走れるようにスリーブレス、さらに今度はソフトシェルも……という感じで、春夏にマッチするマウンテンランニングコレクションの製品がどんどん増えていきました。

増えたと言っても、自分はものづくりはできないから、山の経験を踏まえたアイデア、考えを伝えてノリさんに考えてもらって作ってもらうという関係ではあるんですが、それを繰り返して商品が増えていった感じですね。

製品企画についてティートンブロスチームと打ち合わせ。自身の経験に基づくアイデアが商品に取り入れられている。

 

――自身が関わった商品はフィールドテストを積極的に行なっていますか?

テストに絶好の裏山があるんで、常に山で使い続けています。さらに店にいるとき、街中など、山だけじゃなくて普段からずっと使っていますね。それによって座ったり、足を上げたり、常に製品に負荷がかかっているので、「ここの縫製が弱いですね」など気になったことは伝えるようにしています。

あと、クライミングにおいて岩の割れ目に手や足を入れたり、体を入れて登るようなクラックというスタイルもあるんですけど、そうなると補強が必要な場所などさらに製品の改善点が見えてくるんです。

そうやって日々のフィールドテストを通して、「ここはこういう風に補強しましょう」とか、「耐久性がもうちょっとなので新しい素材を探しませんか?」といった積極的な提案もしています。

岩に体やウェアを擦り付けるようなハードな使い方を日常的にしている。

 

――改善を繰り返し、商品の完成度が上がったらフィードバックは終了ですか?

その時点で「最強で完成形」と思っても、状況も目まぐるしく変わっていくんです。
具体的には新しい生地や素材がどんどん出てくるので、それらをどう使うか、適材適所で切り替えて生地を使ったらどうなるかなど、考えたらきりがないんですね。

自分の体が動く限りはフィールドに出続けて遊ぶことが良い製品作りにも活かされるので、体を動かしながら商品をブラッシュアップしていくとともに、自分の遊びもブラッシュアップする気持ちでやり続けたいと思っています。お店もそうですけど、常に変化、進化し続けることが、「生きている」ことなのかなと。

サーチし続けること

――遊びも仕事も精力的な北野さんがですが、なにかパッションの源になっているのですか?

自分のなかでトリップが大事だと思っていて、国内、海外にかかわらずいろんなところを訪れています。旅を通じて自分の見知らぬ世界の自然を見ることにより、これまで見ていた自然に対する見方が変わってくるんですよね。

旅から帰ってきて、また自分の山に入ることによって目線が変わり、遊び尽くしたと思っていた六甲山のロックガーデンですら、バージンな、本当にまっさらな人が触ったことない岩場であったり、谷であったり、そういうものがふと出てくる。それが次から次へ、六甲だけじゃなくていろんな山で新たな発見があり、「やっぱり山ってすごいなー」と思います。

極めたと思っているのはそのときだけであって、見方が変わることによって、まだまだ開拓できるところがあるなって感じるんです。

行き慣れた六甲山でも未登の岩はまだまだある。日々、新しいボルダリングルートを求めて開拓に取り組む。

 

あと、みんなそれぞれ自分のローカルの山があると思うんですが、その場所をより深く知るには他の山域に行って比較するというのが重要です。

他の山に行くと、よりいろんなものが見えてきて、よりディープな開拓につながる。岩場も、沢も、雪山のバックカントリーも、他を知ることで、それまで見えていなかった風景やルートが見えてくるんです。

だから、常に未知なるものをサーチ、探し続けることこそ自分のアウトドアライフで大事なことであり、続けていきたいと思っています。

北野拓也
1972年、東京都出身。
兵庫県・芦屋のアウトドアショップ「Sky High Mountain Works」代表。登山、マウンテンランニング、クライミング、バックカントリースノーボードなどスタイルを問わずフィールドで遊び、さまざまな情報をブログやSNSで発信中。Teton Bros.のマウンテンランニングコレクションの立ち上げに関わり、現在も企画、監修に携わる。

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