Teton Bros. x 人 -北野拓也 -〈前編〉

Teton Bros. ×人

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自然とともに歩み、共感できる仲間と製品と未来を創造していく。

Teton Bros.は日本、そして世界のフィールドで活躍するプロフェッショナルな仲間たちとフィールドで製品開発を行っています。“Teton”の名のもとに集まってくれた多くの“人” =Teton Brothers がどのように自然と向き合い、人生を築いているのか。そして、Teton Bros. ×人の化学反応を紡ぎます。


 

ジャンルにとらわれず、フィールドと調和するように自由に山を楽しんでいる兵庫・芦屋のアウトドアショップ「Sky High Mountain Works」店主、北野拓也。

物を販売するだけでなく自身の豊富な経験や山の魅力を熱く語る、情熱的な人柄に惹かれてファンになる人も絶えない。

今回のインタビューを通し、独自のアウトドア哲学を中心に、ティートンブロスとの関係についても語ってもらった。

生活の一環として六甲山へ

――なぜ六甲山に近い芦屋にショップをオープンしたのですか?

六甲山って1,000mいかないくらいの山頂があり、山から南を見ると神戸と大阪の街や海を見渡せるようなすごく立地がいいところなんです。芦屋はちょうどその六甲山の入口にあたる場所。
やっぱり山が好きで、“生活”として毎日でも山に行きたいっていうたちなんで、それで大好きな六甲山に一番近いところ、と思ってこの芦屋を選びました。

六甲山のロックガーデンから街や海を見下ろす。ショップからここまで走れば1時間も掛からない。

六甲山は西は須磨海岸、東は歌劇団で有名な宝塚まで50kmくらいあって、ちょうどその真ん中に芦屋があるんです。阪神間と呼ばれる住宅地、街になるんですけど、そこのなかでもこの芦屋は電車から降りて、最も短い時間で山に入れる場所なんですよね。
六甲山に近いほかのいろんな駅でも探したりしたんですが、やっぱりここが一番近いなと。
あと、このエリアの山には植林ではない自然林が豊富に残っているというのも大きな魅力でした。

 

――「スカイハイマウンテンワークス」という店名の由来を教えてください。

アウトドアの遊びにおいて、自分の場合はウルトラヘビーというよりミニマルな思考がベース。つまり、軽量化された道具を使い、さらに体を知ってそこから物を削ぎ落としていってよりミニマル、ライトウェイトな形になっていくんです。そこから取ってミニマリストなんとかとか、ミニマなんとかとか、当初はそういう店名にしようかと思ったんです。でも、ミニマルとかミニマってどんどん削ぎ落としていってしまうんで、ショップ的にはどうなのかなと。

それで、自分も、お客さんも、本当にテンションが上がるような名前、ポジティブな名前にしたいねというところから、“空高く”という意味で「スカイハイ」が思い浮かびました。

あと、いつも遊んでいる六甲山って、冬場に西高東低の冬型が決まると真っ青な空になるんです。僕が好きなアメリカに当てはめると、西海岸の方のカリフォルニアだったりとか、コロラドであったりとか、そっちの方の青さに近いなと。自分も青系の色が好きなんで、ネーミングとしてはまさに「スカイハイ」がベストだなと。それに「マウンテン」と、アメリカのショップでよく使われていて個人的に響きが好きな「ワークス」をくっつけたんです。

さらに付け加えると、自分の好みであるソウルやジャズファンク関係のプロダクションで「スカイハイプロダクション」というのがあり、それに掛かっていたのも大きかったですね。

マンションの一室にあるショップ。好きなものを集めた部屋のようなプライベート感が漂う。

変わり続ける山の遊び方

――いろんな遊びをしているイメージですが、普段どのように山を楽しまれていますか?

昔はときどき縦走で山を歩いたり、疲れているときはゆっくりハイキングしたり、というのが基本だったんですが、六甲山のそばに住み始めてからは、生活の一部として毎日のように六甲山に行くようになりました。
マウンテンランニングもするようになり、昔の登山やハイキングしかしていなかったころに比べると機動力が身に付き、さらに数時間でも何十時間でも動けるようになった気がします。

あと学生のころからクライミングをやっていて、汗で岩が持ちにくくなる夏以外、秋から春にかけては今もクライミングを楽しんでいます。夏は暑すぎるので、アルプスなど高山でクライミング的な遊びをしたり、六甲だったら沢登りをしたりと、シーズンに合わせて山を楽しんでいる感じですね。

マウンテンランニングの流れでそのまま沢を攀じ登る。最近は裸足で行動することも多い。

――北野さんは山を走る遊びをトレイルランニングではなく「マウンテンランニング」と呼んでいますが、その理由は?

トレイルランニングって、トレイル限定、トレイルしか走れなくなってしまうようなイメージがあるんで、ウチではマウンテンランニングって言っているんです。山ってトレイルがない場所の藪漕ぎであったり、気持ちの良い草原であったり、さらにバリエーション的な岩尾根であったり、縦横無尽に走って楽しめるじゃないですか。

岩尾根を駆け登るように上がっていく、となってくるとマウンテンランニングというよりは「スクランブリング」ですね。

いずれにしてもジャンルにとらわれず、どんな遊び方、どんな山のシチュエーションであっても、「自分はあそこは苦手だから行けない」と思わず、自分自身の体の能力で超えられるようになりたいという願望があるんです。
その気持ちがあるからこそ、経験を通じて山でのいろんなスキルを自然に身に付けることができました。

スクランブリング岩を登っていく。最近はスクランブリングさえも裸足で楽しんでいる。

スクランブリングという遊び

――スクランブリングについて、どのようなものか具体的に教えてください。

言葉の意味的にはクライミングとハイキングの間ぐらいになっているものがスクランブリングになると思います。昔、辞書で調べたり、あとはネットでも調べたりしたんですが、やはりそんな意味の説明が書いてありました。クライミング未満、ハイキング以上というイメージですね。

自分自身、各地の山に行っては岩があったらロープを使ったり、使わなかったり、その場所に合わせて開拓のようなことを続けていたんですが、ロープを使わずに岩を登るのがスクランブリングなのかなとおぼろげに思っていたんです。

そんな認識だったんですが、10年近く前、アントン・クルピチカ(通称、トニー)というアメリカのランナーがニューバランスのミニマスというシューズを履いて、ボルダーにあるフラットアイアンという300m、400mあるような岩山を駆け登っている写真や映像を目にしたんですよね。
トニーの友達のジョー・グラントもその仲間だったんですが、彼らスタイル、やっていることははじめは破天荒に感じました。でも、よく考えたらこれって自分がやっている遊びのスタイルにかなり近いなと。

アントン・クルピチカ(奥)とジョー・グラント(手前)。スクランブリングで登り詰めた岩の上で。

 

――彼らのスタイルを知って、よりスクランブリングという遊びに興味が湧いたのですね。

こういったカルチャーがアメリカにもある、というのを知り、自分でも意識してスクランブリングを楽しむようになりました。それから、縁あって雑誌の企画で彼らに会いに行ってスクランブリングカルチャーを取材する機会に恵まれたんです。
そこで実際に本当にフラットアイアンという巨大な岩場、あとは彼らのライフスタイルを垣間見て、すごく衝撃を受けました。

巨大な岩壁、フラットアイアン。クライミングやスクランブリングのフィールドとして親しまれている。

ロープを使わないスクランブリングスタイルでフラットアイアンを登っていく。

日本だとなかなかフラットアイアンのような岩場はないんですが、それからはスケールにかかわらず日本各地、あと六甲山でもスクランブリングの目線で岩場を探して、楽しんでいますね。

 

北野拓也
1972年、東京都出身。兵庫県・芦屋のアウトドアショップ「Sky High Mountain Works」代表。登山、マウンテンランニング、クライミング、バックカントリースノーボードなどスタイルを問わずフィールドで遊び、さまざまな情報をブログやSNSで発信中。Teton Bros.のマウンテンランニングコレクションの立ち上げに関わり、現在も企画、監修に携わる。

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